2024年01月03日

学芸員のお仕事(民具の受け入れ) 2005年07月21日04:00

「古いものを処分するので博物館で引き取ってくれませんか」
という問い合わせがときどきくる。
この対応は私の担当。
今日は2件も続けてきて、どちらもいつもとは違った雰囲気のものだった。

民具の受け入れは、地元優先、一括収蔵の原則がある。(と私は思う)
できるだけ使われていた場所に近い地元で受け入れるべき。
自宅で残せなければ、その地域の学校や公民館、それでだめなら地元の博物館、だめならさらに遠くの博物館。
また、できるだけ一緒に使われていたものは同じところで一括して受け入れるべき。
ばらばらにあちこちに散逸してしまうのはその民具の価値を薄めてしまう。

1件目は、ご自宅でやっていた昔の鍛冶屋さんで使っていた材料は要らないかというご夫人からの問い合わせ。
すでにあちこちの博物館に寄贈した残りだという。
できたら地元の受け入れ先に一括収蔵されてはと説明しようとすると、実はこの方、古い道具類を集めていたが、2、3年前から急に道具の声が聞こえるようになり、怖くなって受入先を探しているというのだ。ずいぶんあちこちの博物館に問い合わせ、多くのものを受け入れてもらった様子。博物館の担当者による考え方や対応の違いに心を傷めることもあったらしい。
で、その材料は、ぜひうちにと言われるのである。なんだか、理屈でなく、その人とモノに会わなくてはならない気がして、来週、会う約束をした。

2件目は、30年程前に自分が使っていた投網は要らないかという男性からの問い合わせ。
天然素材で作ったもので柿渋を塗って手入れし、まだまだ使える状態だという。
私は”ぜひ使っていただいて、魚とりの技を子どもたちに伝えられたらいいですね。(うちで収蔵すると永久保存資料となって使うことができなくなってしまう)”と言いつつ、地元優先の原則を説明した。
すると地元の水産センターに問い合わせてみるとのこと。
電話を一旦切ると、ほどなく折り返し電話があり、”水産センターで展示させてもらいたいと言われ渡してきた”と明るい男性の声。
「それはよかったですね。これから夏休みに入って、センターは子どもたちでにぎわうでしょうから、たくさんの人に見てもらえて、投網も喜ぶことでしょうね。わざわざうれしいご報告をしてくださり、本当にありがとうございました。」と答えることができた。

この仕事に就いて10年。
正直言って、こんなにスピーディーに素敵な結末を迎えることは初めてでは。
軽いおどろきとともに、久々に仕事をしていて爽快な気分を味わった。

1件目の今後の顛末もちょっと楽しみだ。


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Posted by なかてぃヨーコ at 15:22│Comments(0)mixi日記(2005~2013)
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