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Posted by 滋賀咲くブログ at

2012年02月13日

昔の道具の声を聞いてみよう!(後編)

(中編)よりつづく。
先日、小学校3年生に行った出張授業のときのお話です。

  ×  ×  ×

授業を終えて、後日、子どもたちに宛てて、こんな手紙を送りました。

・道具の声を聞こうと心をかたむけても聞こえないときはあります(私でも)。
だから、聞こえなくてもがっかりしないでください。

・道具の声は「耳」で聞くのではありません。
「心で感じる」ものです。ふっと、言葉が心にわいてきます。

・水道も電気も便利な道具もない昔のご先祖さまは、
周りにあるものの声を聞きながら、すべてのものが無理なく無駄なく
活かせるようにと、くらしてきました。

・自分のまわりのものの声を聞いてみようとすることは
とても大事ですてきなことだと私は思います。

 ×  ×  ×

この授業の話を連れ合いにしたとき、
彼は、「よかったね。「知る」ことより「感じる」ことだ大事だからね。」と
答えてくれました。

知ることは、感じることの半分も重要ではない。

『沈黙の春』を著したレイチェル・カーソンは、
著書『センス・オブ・ワンダー』の中でこう語ったそうです。


「知る」ことは、「感じる」ことを阻害する。

わからないからこそ、感じとろうとするのであって、

生半可に知識があるとわかった気になり、
ほんとうに大事なことに気づけなくなってしまう。


今の激動の時代、自分の身の回りで何が起こっているのか。

「専門家」から提供される情報に頼りきったり、

「以前は」とか「ふつうは」とか「一般には」とか「常識では」と
頭につけて思い込んでいたことは、
一度、すべて捨て去り、

自分の五感をフルに使って真実を感じとろうとすることが、
これから生き残っていくために大事なことだと確信しています。

ですから、

全国で行われる小学校3年生の「昔のくらし」の授業が、
「道具の声を聞こうとする」感性を自ら掘り起こすきっかけになれば、
これからの日本の行く末に一筋の光が見えてくるのではないか!

さらに、
この感性は、民具だけでなく、昆虫・植物、化石や岩石・・・
いろんな資料・標本と向き合って育てることができるはず。

とすれば、
全国の「博物館」が、収蔵資料を活用して、
公教育と連携して、
「知る」よりも「感じる」力を育てる機会を作ることができれば
日本の将来に確実に光がさしこんでくるのはないか!

と、妄想がふくらんできました。


こんな気づきを与えてくれるきっかけをくれた同僚に、
そして、「昔の道具の声を聞いてみよう」という授業を受け入れてくださった
小学校の先生方・子どもたちに、改めて感謝感謝です。  

Posted by なかてぃヨーコ at 12:44Comments(0)昔の道具の声を聞く授業2011

2012年02月13日

昔の道具の声を聞いてみよう!(中編)

(前編)よりつづく。
先日、小学校3年生に行った出張授業のお話です。

 ×  ×  ×

今回の授業をするきっかけを作ってくれた同僚とともに、
小学校の空き教室に、ござを敷いて、
火鉢・炭入れ、たらい・洗濯板、水桶2つ・天秤棒、竹ザル、
そして、ござの横にむしろとわら草履2足をセット。

時間になって、子どもたちが先生に連れられて、
上履きを廊下に脱いでから順々に入室。
ござの上に30人がきちんと並んで座り、先生が私の紹介をして、
いよいよ授業が始まります。

「こんにちは」とあいさつ・自己紹介をし、
子どもたちがおじいちゃん・おばあちゃんからどんなお話を聞いてきたか
軽く振り返って、今日のテーマの発表です。

私「みんな、モノの声って聞いたことあるやろ」
子「えー」
私「机の上の消しゴムとかが落ちたときに「痛い!」とか言うやん」
子「えー、言わへん」
私「そうかなあ。私は博物館にある一万点の道具を一つひとつ見て、
話ができるようになったで」
子「ほんとに?」
私「今日は、みんなにも道具の声を聞いてもらおうと思うんやけど、
やってみる?」
子「うん、やるやる。やりたい!」
私「じゃ、今から道具を紹介するから、自分が声を聞きたいと思う道具を
選んでな」

という調子で、見事に子どもたちはその気になり、
各自選んだ道具の周りに座って、配布されたプリントを各自ボードにはさみ、
準備万端。

・古い大事な道具なので、大切に扱う。
・じっくり観察する。
どんな材料で、どうやって作られ、どうやって使われているか。
それがわかる「あと」をさがす。
いろんな角度から、裏返したりして見る。
・形をスケッチしながら、気づいたことを周りにメモする。

と手順を伝えて、「さあ、はじめ!」
と声をかけると、あちこちで楽しそうに作業が始まりました。

私はそれぞれの道具を回りました。

<むしろ・わら草履チーム>
・わら草履は大事に履いて「ビーサンよりいいわ~」
・むしろに「はだしで歩いていい?」「気持ちいい!」
・わらが、たてとよこに組み合わさってできている。

<火鉢・炭入れチーム>
・火鉢は「あつっ。やけどするわ」「でも、下の方は熱くないな。なんでやろ」
(危ないので同僚に常時ついてもらう)
・粘土で焼いて作っている。(信楽焼の体験があった)
・炭は、木から作られる。(そのまま燃やしたら燃え尽きる。特別な技がある)

<竹ザルチーム>
・竹を割って細くしたものを組み合わせて作ってある。
(見聞きしたり実際にやった経験がある)
・私「どうやって作ってある?」「たての竹の間をよこの竹が上下になって」
私「へえ~、それはわら草履やむしろと同じやなあ」

<たらい・洗濯板チーム>
・「思ったよりも大きかった」(事前に洗濯の今昔比較の学習で写真で見ていた)
・昔はたらい舟として子どもが持ち出して遊ぶこともあった。「入ってみていい?」
・木でできている。一枚でなくたくさんの部品を組み合わせている。
・洗濯板にはくぎも打ってある。「痛かった?」

<水桶・天秤棒チーム>
・たくさんの部品の木でできている。
・「ロープの材料は?」私「シュロ。庭で作ってるおうちもあるよ」
・実際に天秤棒に水桶をさげて運んでみる。
・はんこみたいなものがある。焼印。
私「自分の名前でなく、おうちの名前。自分だけのものでなく、
ご先祖さんから受け継ぎ、子どもたちへ伝える大事なもの」

一通り作業が終わったら、
各チームごとに、私が子どもたちにインタビューしながら
気づいたことを発表してもらい、

今回の道具たちは、
「身近にあるもので、使う人が作ったり直したりしながら、
大事に使われてきたもの」ということを、全体で確認。

最後に、
「道具の声が聞こえたお友だちはいるかな?」と聞いてみたら、
手をあげる子どもたちがいました!

幾人かに発表してもらったのですが、

「たらいが、「前のご主人さまがばらばらにしてしまったけど、
直してくれてうれしかった」と言ってました。」

と言葉を聞けたときは、思わず眼に涙がたまりました。

授業が終わってからも、自分の教室に帰る前に、
たらいに入ったり、水桶をかついだり、むしろをはだしで歩いたり、
している子どもたちもいました。

そっと私に近寄って
「わら草履に「さっきは黙って履いてごめんね」と言ったら「いいよ」と答えてくれた。」
と小さい声ではにかみながら教えてくれた子どももいました。

ほんとに、我ながらいい授業ができたなあとうれしかったです。
先生方にもいい授業だったと喜んでいただけました。

でも、最後まで「声なんて聞こえへんかったわ。聞こうとしたけど」と
悔しそうに大声で怒鳴っていた子どもたちもいたので、

後日、子どもたち宛に手紙を送りました。

つづく  

Posted by なかてぃヨーコ at 11:45Comments(0)昔の道具の声を聞く授業2011

2012年02月13日

昔の道具の声を聞いてみよう!(前編)

3学期のこの時期、数多くの小学校3年生が「昔のくらし」の学習をします。

先日、ご縁のある小学校で「昔の道具の声を聞いてみよう」という
出張授業をしてきました。

昔ながらの集落と新しい住宅地が混在する30名の2クラス。

先生との事前打ち合わせのときに、
子どもたちに宿題でおじいちゃん・おばあちゃんから子どもの頃のお話を聞いて、
その結果を送ってくださいとお願いしていたら、

・洗濯物を「川ですすいでいた」
・「火鉢に大きな竹のザルをかぶせて」洗濯物をかわかした
・「箱枕」「しょいこ」「からかさ」をつかっていた

という、今ではなかなか小学生が聞くことができない
一世代か二世代前のくらしの情報がいくつも出てきていて、
びっくりしました。

そこで、感性のある子たちがいるなと直感して、ふと思いついたのが
「昔の道具の声を聞いてみよう」という授業。

博物館に収蔵する体験用の民具の中から、いくつかピックアップし、
子どもたちの前に並べて、自分の選んだ一つの道具について
スケッチしながら、その声を聞こうと心をかたむけてみよう。

というもの。

今までにさまざまな方々に、昔のくらしをめぐって
いろんなお話や実習をしてきましたが、これは、初めてのネタです。

 ×  ×  ×

学校の先生方からは、座学でなく体験を重視して、
実際に道具を使う体験が求められます。

それを受けて、琵琶湖博物館でも
手押しポンプで水を汲んだり、石臼で粉をひいたり・・・といった
体験プログラムが大人気です。

でも、対応するスタッフが数名必要ですし、
使うことで道具が消耗したり破損したりして維持管理にも手間がかかる。

そもそも、博物館学芸員としては、資料は大切に扱いたいのです。

琵琶湖博物館には一万点にのぼる民具を収蔵しています。

私は開館の年に、民俗学担当の学芸員になって、
初めの仕事がこの民具の整理でした。

一点一点触れながら、クリーニングし、写真を撮り、
法量・重量をはかり、実測図を作り、目録・データベースを作成する
という作業を歴史資料整理室のメンバーとともに何年も行う中で、
民具の声を聞きたいと願いつづけていました。

もともと、民具の専門家ではなかったので、
何に使うかわからないモノも数多く、
本を調べてもわからないものも多々ありました。

しかしじっくりと材料や作り方、使い方のわかる痕跡を見つけながら、
民具と対話して思いを巡らせる楽しさを味わったのです。

「モノを傷つけることなく、しっかり向き合って感じること」は、
民具だけでなく、あらゆる分野の博物館資料に取り組む基本。

博物館の展示物の深い楽しみ方を身につけるためにも、
学芸員が子どもたちにこうした機会をつくるのは意味がある
と思いました。

 ×  ×  ×

民具を使ってきた生の声をおじいちゃん・おばあちゃんから
聞ける子どもたちなら、
きっと、こんな授業にも、のってくれるに違いない。
そう期待してのチャレンジ。

わくわくどきどきしながら、
洗濯板・たらい(木製)、わら草履・むしろ、火鉢・炭入れ、木桶2つ・天秤棒
を選んで公用車に積んで、小学校へと向かいました。

つづく  

Posted by なかてぃヨーコ at 10:33Comments(0)昔の道具の声を聞く授業2011